木のはなし


ウォレマイ・パイン

 ※世界最古の種子植物と言われている「ウォレマイ・パイン」約2億5千万年~1億5千万年前のジュラ紀に生存した種であると判明したそうです。通称「ジュラシックツリー」

東京ディズニーランドにも植えられています。      撮影地 : 横浜みなとみらい  

 

日本人と木の関わり

 

その昔、「人は生まれた時に木のたらいで産湯につかり、死んだときに木の棺に入る、その間も木に寄り添った生活がある」と唱えられていたそうです。

 

木は、私たちの生活の中に無くてはならない存在でありながら、木を使う本来の意味が忘れ去られ“便利”、“機能的”と言われる、新しい素材に移行しています。

 

それでも依然として「木」が私たちのまわりをとりまき、生活を豊かにしています。

 

しかし「木」は、目にしているだけで心を落ち着かせる効果がありますので、それが本物なのか偽物なのかより、価格や扱いやすさなどが優先されています。

 

本当にそれで良いのでしょうか?

 

偽物と分かった途端、愛着も薄れ、安らぎ効果もなくなり、扱いも雑になる、大事に使ったとしても長持ちしません。結果、ゴミとなります…

 

先人の知恵により、理にかなった利用がなされてきた「木」の良さを見直す時期が来ています。

 

そして、語り継がれてきた「木は良い」の本当の意味を知ることが大切です。

 

建築関係者の多くは木材について余り知識がない

 

木は、あまりにも身近な存在過ぎて、誰もが「知っている!」つもりでいることが難題です。

 

我々建築業界の人間でも、間違った解釈や、情報の発信をしてしまいがちです。

 

一般の建築現場で使われる木材はほぼきまった種類ですしほとんどが下地材です。化粧材を使う和室の設えが出来ない大工もいますし、階段すら加工できない大工もいます。

 

この様な人たちがどれだけ木材の知識を持っているか疑問を抱きますがこの様な人こそプロ意識が強く間違った発信をしがちです。

 

ちなみに木材とは、木そのものの「無垢材」チップ等を接着剤で固めた「木質材」ベニヤ(薄板)を交互に貼り合わせた「合板」等の総称です。

 

安い家は全てがそれなりです

 

樅という一つの樹木と向き合うことで、忘れ去られていた樹木への信仰とその意味を改めて知ることとなりました。

 

我々住宅を供給する側の人間が、木と言うものを真摯に理解し、正確な情報を発信することが求められているはずです。しかし、現状は残念ながら違います。“プロ”と言われるが故に、自身の持つ知識に溺れ、疑問を抱くことさえ忘れてしまった人がたくさんいます。そんな人たちが安い家を造り出しています。

 

残念な話ですが、全ての人が安全な住まいを手にすることは不可能です。そのために安い家も必要なのだと思わざるを得ません。

 

住宅は車を買うのとは違います

 

家に合わせた生活をするのではなく、家族のために必要な家を造ることが求められるのですから、それなりの知識と経験が必要となります。建築業界の実情を知ると誰にアドバイスを受ければ良いのか不安になられることと思われます。

 

知っているか否かで大きな違いが生じてしまう大事な話しです。ここで「木のはなし」を学んでいただけると『本当の様な嘘の話』、『嘘の様な本当の話』の聞き分けができるようになります。

 

都合の良い言葉に騙されることが無い様に、少なくとも健康に関わることにおいては、自己の責任で判断できるよう、最低限の知識を身に着けることが大切です。

 

少し難しい話しもありますが、何度か読み返していただければ必ず理解できる内容です。きっとお役に立つと自負しております。

 

※ 参考図書 「木材のおはなし」 ㈶日本規格協会 著者 岡野 健 先生

 

針葉樹と広葉樹

針葉樹と広葉樹

 

一般的に「樹木」を針葉樹と広葉樹とに分けることがありますが、その違いは何でしょう?

 

針の様な葉っぱ、広がった葉っぱ… 

 

そもそも樹木は、「裸子植物」と「被子植物」に分けられています。

 

裸子植物は「ソテツ門」「イチョウ門」「マツ門」「グネツム門」の4門に分けられています。

 

このうちのマツ門の樹木を「球果植物」といい、英語圏で「コニファー」と呼ばれます。コニファーの和訳が「針葉樹」で、裸子植物の代表的樹木です。

 

明確な違いは、樹の構造にあります。

 

針葉樹では、縦方向の細胞(仮道管)が、95%を占め、その働きは根から葉へ水を運ぶ機能と、縦方向へのすっと伸びる樹形を作り出します。とても単純な構造です。

 

広葉樹は、水を運ぶ細胞(道管)以外の細胞が複数存在し、樹皮から髄に放射方向に広がる細胞が20%あることによって横へ広がる樹形が作られます。

 

それぞれの起源には、5千万年~1億年の開きがあります。

 

裸子植物の誕生は、約2億5千万年前、被子植物の誕生が約1億5千万年前と言われています。

 

現在生存する裸子植物が750種に対して、被子植物は20万種(建築資材としては2万種)以上あるそうです。裸子植物の数は、減り続けているそうです(モミ属は数少ない裸子植物の中で約45~47種あると言われています)

 

土の無い時代に誕生した裸子植物は、大気中で栄養素を作り出す術を身に着けました

 

裸子植物の森では、房葉から放散される成分と大気中の悪臭を結合させ、無臭化しています。驚くことに無臭化された成分が栄養素であるアミノ酸類なのです。森は常にこれらの成分に満ち溢れ、地表に落ち雨水と共に根から吸収されます。

 

樹木が酸素を作り出すことは誰もが知るところですが、空気の浄化にも役立っていた訳です。

 

裸子植物が朽ち豊かな土壌が形成され誕生したのが被子植物です。被子植物の森は、腐葉土が堆積した栄養豊富な土壌があるので自ら栄養素を作り出す必要もなく裸子植物が放散するような放散物質が少ないのです。

 

 裸子植物 = 種がむき出し

 被子植物= 種が実に包まれている

 

※身近に存在するイチョウですが「イチョウには実がなる」との認識があります。「実」に思える部分がじつは種だそうです。被子植物が出現したと言われる、1億5千万年前頃に誕生し、ほぼ変化することなく「生きた化石」と言われています。日本に自生していた訳ではなく、平安時代以降に持ち込まれた栽培種。原種は中国の一部にわずか確認されているだけだそうです。

更に詳しく

裸子植物のイチョウ門は化石としては17属が知られているそうですが現生は1属のみです。一見して、広葉樹と思われがちですが裸子植物と成ります。ソテツ門は、3科10属。グネツム門も広葉樹に見立てられがちの様ですがマツ門に近く3科3属ある様です。

 

裸子植物 = 針葉樹ではなく、マツ門 = 球果植物門 の文字通り針の様な葉を持つ樹木を針葉樹と呼びます。先にも記しましたが、園芸などで耳にする「コニファー」とは針葉樹のことで、語源は「球果」。

 

※針葉樹と広葉樹と言う呼び名で樹木全体を分類してしまう傾向があり誤解されていますが、本来、裸子植物の大半の樹木、被子植物の一部の樹木の特徴から分けられた呼び名です。一般的に 針葉樹 = 裸子植物

広葉樹 = 被子植物として認識されています。 

木目

1/fのゆらぎ

※スギの板目 特殊な杢が現れることがあります 

 

 

木材に現れる模様全般を木目または木理と言います。

 

木材を目にしたときの心地よさをかもし出している立役者です。

 

この心地良さを「1 / fのゆらぎ」と表現します。

 

木目を構成する組織構造には、成長輪と放射組織があります。

 

木の断面を見たとき現れる木目を年輪と言いますが、正式には成長輪と言います。

 

線と線の間を早(そう)材と言い、線を晩(ばん)材と言います。早材から晩材までの一巾が一年の成長を表しています。

 

しかし、一年を通して気温、湿度の変動がない場合、明確な成長輪が形成されません。

 

放射組織は、樹種によって現れ方は違いますが、樹皮側から樹の中心に向けて放射状に伸びる組織で、養分の供給を担う細胞なので例外なく全ての樹木に形成されます(柔細胞)。

 

針葉樹では、肉眼での確認はできません。広葉樹の「放射孔材」と言われる樹木では、容易に確認できます。

 

寒い地域で育つ樹木は、成長が遅く、成長輪の巾が狭くなります。この様な状態を「目が詰んでいる」と言い強度のある良材として好まれています。

 

しかし「目が詰んでいる」=「強度がある」は、裸子植物に限定される相関です。裸子植物は、晩材が樹体を支えているため、目が詰むほどにその相対量が増えるので強度が増します。また、晩材の巾自体が広ければ広いほど強い木と言えます。

 

一方、被子植物ではこの様な相関はまれで「環孔材」と言われる樹種では、負の相関になっています。良く知られている「ケヤキ」「クリ」「タモ」がその仲間で、これらの成長線が詰むと「ぬか目」と言われ強度の低い木とされ嫌われています。

クリの木の道管

環孔材で最も太い道管を持つ「クリ」の断面。薄くスライスした板に後ろから光を当てています。

 

光が見える部分の丸い点々が道管です。道管は、早材部分にあります。

 

「くり」の道管は、太いもので直径0.4mmもあります。

辺材と心材

「木」を輪切りにすると、周辺の色の薄い部分と中心よりの色が濃い部分とに大別することが出来ます。

 

前者を辺材、後者を心材と言い、区別されています。

 

理由はこれらの部分で耐久性が著しく異なるからなのですが、ここに「木」の驚くべき秘密が隠されています。

 

一般的に、心材、の耐久性が高いことは良く知られていますがそれはなぜでしょう?

 

 

 辺材は、根から吸い上げた水を葉に送る「パイプ」と「ポンプ」の役目を担っています。また「柔細胞」と言う栄養源を蓄える組織(放射組織)と、樹種によって樹脂を蓄える「樹脂道」があります(※樅にはありません)。

 

辺材が菌や害虫に侵されやすいのは、柔細胞があるからです。

 

辺材は成長に伴い水を送る機能を失い心材に変化します。

 

樹脂道は樹脂が抜け単なる空隙となりますが、柔細胞がその空隙を埋める化学物質を作り出します。

 

同時に細胞壁に化学物質を沈着させ、耐久性を増します。これが樹木本来の色であり性質の現れです。

 

この過程を「心材化」と言います。心材化に伴い柔細胞と樹脂道は消滅します。風雪に耐え菌や害虫から身を守るために自らの細胞を変化させ心材を形成します。

 

※モミは、形成層(樹皮の下側)に傷その他の刺激を受けるとその部分を樹脂で覆うために「傷害樹脂道」を生じることができる特殊な木です(モミ属とツガ属)。

 ※針葉樹の柔細胞は5%、広葉樹では10~30%だそうです。広葉樹の方が害虫に狙われやすい様です。

 

「モミ」は、心材化しても際立った色が着きません。

 

しかし伐採直後にその切り口を見るとはっきりと見分けることができます。

 

心材部に水が上がっていないことが分かります。

 

モミ材の白く美しい木肌は、心材に色を着けない化学物質のおかげという訳です。

調湿作用

欧州モミ 自由水と結合水

※伐採直後の欧州モミの断面 

 

 

「木は呼吸している」と言われます。

 

それは、木が周囲の温度、湿度の変化に応じて吸湿したり放湿したりするからです。

 

樹木に水が含まれていることは、誰もが知るところですが、自由水と結合水に大別されています。

 

自由水とは、木が根から吸い上げた水そのものに対し結合水とは、木の細胞内壁に獲り込まれている水分で文字通り木と結合しています。

 

自由水の量が減っても重量が変わるだけで、木の性質に変化をもたらしませんが、結合水が減り始めると性質に変化が起こります。

 

収縮し、干割れが生じ始めますがそれに伴い強度が高まります。

 

木を扱う上で、含まれる水分量を知ることは、大切なことです。

 

通常、樹木に含まれた水の重さを細胞壁の重さで割った数値(含水率)で表します。

 

ちなみにモミは、心材89%、辺材163%です(数値は樹種別に公表されている)。

 

上記の数値は、伐採直後の含水率ですが、大気中に放置すると樹種に関係なく、11~17%まで下がります。

 

その過程は、自由水が蒸発しきったところで30%、そこから結合水が蒸発を始め収縮を開始し、木としての強度が高められ安定します。

 

安定している状態の含水率を「平衡含水率」と言います。木はこの状態になって初めて調湿を開始します。

 

未乾燥材であっては「調湿作用」が起こらないと言うことです。

 

『木は呼吸している』とは、平衡含水率の変化に伴う吸湿、放湿の状態を言います(全ての樹種でほぼ同じ)。                      

 

 

仮に室温25℃、湿度60%の部屋があるとします。この時の容積絶対湿度は13.8g/㎥です。部屋に平衡含水率に達した木材があった場合、その時点の平衡含水率は約11.6%です。

 

この部屋の室温がゆっくり20度に下がったとき理屈上の飽和水蒸気量は17.31g/㎥ですので、13.8/17.31で湿度79%になるはずです。

 

しかしこの環境における木材の平衡含水率は、約16.8%に変化しています。11.6%あった水分を5.2%分吸湿します。

 

木材を使用していない部屋だと計算通り湿度79%になりますが、木材を使用していれば、存在する木材が吸湿する分部屋の湿度が下がることが明確です。

 

逆に室温が30℃に上昇した場合、飽和水蒸気量が30.38gですので13.8/30.38で湿度は45%になるはずです。しかしこの環境の平衡含水率は約8%に変わりますので11.6%あった水分を3.6%分放出します。木材が放出する分部屋の湿度が上がることが分かります。

 

実際の環境下で考えると… 

 

室温33℃、湿度55%の部屋があるとします。この時の容積絶対湿度は、19.6g/㎥です。木材の平衡含水率は、約9.5%です。

 

この部屋で温度はそのままで、湿気の流入があり湿度が70%に上昇しようとしたとき、この環境における木材の平衡含水率も約12.5%に上昇しますので、流入した湿気を木材が吸湿することで、部屋の湿度が70%まで到達することがありません。 

 

温度と湿度の関係で平衡含水率が変化し、吸湿と放湿を繰り返し一定の湿度を保つことが可能なのです。

 

「天然の除加湿器」と言われる由縁です。

 

※容積絶対湿度とは、空間での、空気1㎥中に含まれている水分量です。

※平衡含水率は、木材が環境に応じて含めむ水分量です(木材の細胞壁の重さに対する比率)。「平衡含水率表」から読み取ることができます。

※飽和水蒸気量とは、空間に存在することが出来る100%の水蒸気量です。1㎥当たり何gであるかを示します。「飽和水蒸気量曲線」から読み取ることができます。

 

木材が呼吸するタイミング

木材は常に呼吸している訳ではなく、ある条件の下で行われています。

周囲の雰囲気によって吸湿したり放湿したりするのですがそれぞれの条件を示します。

吸湿

気温が低下して湿度が上昇する時に吸湿が行われます。

 

冬の室内では暖房を行います。加湿をし室温が上昇すると湿度も高まります。暖房を切ると当然室温が下がり始め湿度は更に高まってしまい朝方窓に結露が起きたりする訳です。木材は室温が下がり始めるタイミングで吸湿を始めるので結露をある程度抑えることが出来ます。「ある程度」とは木材の吸湿量は室温と湿度の関係で決まっていますので室内にある木材の量によって変化するからです。

 

室温を保ち湿度を上昇させれば吸湿が行われます。 

樅の木の部屋で加湿を行うときはこの法則に従えば有効な加湿が行われます。

 

木材の正常な吸湿は大気中の水分子のみです。水そのものを吸うことはありません。

 

 

放湿

気温が上昇して湿度が低下する時に放湿します。

 

四季を問わず室温が上昇する時放湿が行われるので水分子を室内にとどめられない場合は常に乾燥傾向にあります。大気が乾燥する時期の窓の開放ちには注意が必要です。換気などは出来るだけ午前中に済ませましょう。大気が潤っている時期は特段注意することはありません。夏場の多湿時も作用は同様で過剰な水分子を吸湿するようなことは行われません。木材が沢山あると多くの湿気を吸ってくれる様な気がしますがその様なことはありません。ですから夏場の湿温計を見ても湿度はあまり変化しません。しかし体感としてジメジメした感じはありません。木材自体が多湿の状態でも正常な水分量を保っているので単純に室内空気のみが湿度として示されているだけだからです。木材の無い部屋では室内空気以外水分子がまとわりつく素材が多いので体感的にジメジメを強く感じる訳です。

 

木材が正常に潤っているとき室内の湿度が低下すると放湿を行い乾燥を防ぐ働きを行います。

木材を使用した部屋とそうでない部屋(ビニールクロスなど)とを比較する際、一日を通して湿度の変化を見てみるとその違いはがすぐ分かります。

 

前者は比較的安定していますが、後者では変動が激しくなります。

 

調湿効果が木材の平衡含水率の変化に基づいていることを述べましたが、原理を知ると、対象空間の容積に対する木材の表面積の割合が重要であろうことが分かります。

 

「樅の木の家」では、経験値より床面積の200%を基準としていますが、脱衣場やクローゼット等では、素材表面の熱伝導率を一定にすることを目的として「全面張り」を標準としています。

 

しかし、いくら木材を使ったとしても使用する木材によっても大きな違いがあることを知ってください。

 

針葉樹と広葉樹・・・針葉樹が効果大

天乾材と人乾材・・・天乾材が効果大

柾目材と板目材・・・柾目材が効果大

板目の木表と木裏・・木裏が効果大

 

全面モミ張りの洗面脱衣室では、化粧台の鏡が曇ることもありません(鏡が冷えていないことが条件です)。 

 

木裏と木表

 木材にも人と同じように「裏表」があります。 

人の場合「裏表のない人」なんてこともあるんもしれませんが「木」には必ず裏と表が存在します。

 

樹木は、根元から天に、中心から外へ成長します。そんな構造の樹木を木材にすると、部位によって異なった性格を表します。

 

そのため部位ごとに名称が与えられ、目的に応じた利用がなされます。木裏、木表もその名称の一つです。

 

木材となった時、中心側が木裏で、樹皮側が木表です。

 

この見極めは、木材を使用する上で基本中の基本で大きな違いがあります。

 

まず、木材は乾燥する際、樹皮側の収縮率が高いので樹皮側が大きく縮みます。樹皮側に引っ張られることで、木表側に反りかえります。

 

“凹”状になると言うことです。当然反対側の木裏は“凸”状になります。

 

木肌に関しては、樹木の成長は、木表側に被さるように大きくなります。

 

依って木表側では、素直な木目となり、木裏側では、木目が引っ掛かりやすくなります。

 

敷居などの表面に木裏を使ってしまうと、ささくれて足に刺さったりしてしまい危険です。この場合いくら削っても治りません。素足で歩く縁台やウッドデッキなどでも注意が必要です。

 

この様に、住宅を造る上で木材の使い方のルールがいくつも存在します。

 

近年本物の木材を使った建物が激減しているため上記の様な不具合も減っています。

 

しかし今後、内装材の木材使用率が高まる動向にあるため、木材の使用に不慣れな業者や職人の知識不足が再び問題を引き起こすのではと懸念されます。嘘みたいな本当の話です。

 

以前「ウッドデッキに腐りにくいと言われた木を使ったのに腐ってきたので見て欲しい」と言われ見てみると、巾の広い板を木表を上にして施工していました。先に触れたように基本は「人が肌で触れる部分に木裏は出さない」が鉄則なので問題無いように思われますが、この場合、巾の広い板を使いたいのであれば木裏を上にするべきでした。どうしても木表を上に使いたいのであれば、板巾を狭くするなどの配慮をするべきでした。雨が当たる場所では、木表を上に使うと凹部に水が溜まりやすく、板の中心部から腐り易くなってしまいます。

 

しかし、反った板を製材してから使用すると、濡れた場合の反りは逆になります。製材する前の状態に戻ろうとするためです。

 

柾目の板は反らないと認識されていますが、完全な柾目板は、ほんの数パーセントと限られています。大半が追い柾目と言われる板目と柾目の中間の物ですので反りに対する注意が必要です。

 

余談ですが、木材の部位を指す名称でもう一つ「ウラ」が存在します。「末」と書いて「ウラ」と読みます。一般的には、そのまま「スエ」と読まれることが多いのですが、「木モト竹ウラ」と言う言葉があり「木元竹末」と書きます。「モト」は地面側、「ウラ」は天側を指します。この言葉の意味は「薪割りは、元から割りなさい、竹を裂くには、末から裂きなさい。」とのこと。

 

※写真左は紀州スギの木表側。右が木裏です。


板目と柾目

ウェスタン・レッド・シダー 屋根材

※ウェスタン・レッド・シダーを柾目に割いて屋根材とした「シダーシングル」 

 

常識として木は水(液体)を吸います。

 

しかし木造船は浸水しませんし、酒樽からお酒が漏ることもありません。

 

木材の使い方で違うのでしょうか?

 

「板目材は水を止め柾目材は水を通す」と言われることがあります。

 

写真は北米でよく目にする木製の屋根材です。

 

「ウェスタン・レッド・シダー」はヒノキ科クロベ属の木で耐久性の高い木として知られています。

 

当然水が濡れてはならないところに使われる材ですが柾目材です。

 

ルーマニアには「樅」の柾目板を屋根のみならず外壁にも使った世界遺産の教会があると聞きます。

 

濡れても乾きやすいと言う理由だと思いますが水が通り抜けてしまっては困ります。

 

実は木は板目材であろうが柾目材であろうが水を通さないのです。

 

伐採直後の樅の切り口を見ると自由水の存在を確認することができます。

 

辺材と心材の堺がはっきりと分かります。

 

根から上がったい水は辺材部を通ります。辺材から心材へ水が流れては困ります。

 

樹木で水が通るのは縦方向のみです。ただし拡散と言う手段で分子レベルで横方向にも伝わります。

 

液体として通り抜けることはありません。

 

針葉樹の細胞は単純で95%が仮道管と呼ばれる水を吸い上げるための“部屋”の集まりです(心材化によってその機能はなくなる)。

 

“部屋”の大きさは早材で0.03mm X 0.03mm X 3mm 晩材で0.03mm X 0.01mm X 3mm。壁厚は早材で0.001mm 晩材で0.003mm。紡錘形と言われる両端がとがった形状が連なっています。

 

1つの部屋が水で満たされると壁孔の弁が開き、隣の部屋に流れます。この動作の連続で縦方向に水が運ばれます。

 

縦方向への水の流れが構築されているので、板目、柾目の関係はありません。

 

よって木材は板目面、柾目面に関係なく水を通さない性質であることが分かります。

 

柾目材の樽を作っても水は漏らないのです。

 

 木材の小口(切り口)からは容易に水の侵入がなされ、毛細管現象にて浸透します。また表面の壊れた細胞には水が溜まりますので一見水がしみた様に見えますが、侵入はありません。

 

板目と柾目

 

丸太を縦割りにしていくと様々な紋様を目にすることができます。この紋様を木目と言います。

 

木目は大きく分けて「板目(いため)」「追柾目(おいまさめ)「柾目(まさめ)

 

に分けられます。針葉樹と広葉樹で機能に違いがありますのでここでは針葉樹についてお話しします。

 

丸太を端から挽いていくと最初に見える波の様な目が板目です。髄に近づくにつれ波が消え直線的になってくると追柾目。髄を挽いた部分が柾目です(「樅の木の家」では追柾も柾目として使用しています)。

 

柾目材は、基本無節取りをしますので1本の丸太から柾目材のみ挽くとなると、熟練の技が必要となりますし、材積も減ります。そうまでして柾目材を必要とするにはそれ相応の理由があります

 

その美しさ由神社仏閣に使われる材は柾目が圧倒的に多いし神事に使われるお札や道具類も柾目材です。

 

材として狂いが少ないことも関係しています。また調湿効果に優れることも見逃せません。

 

お櫃(ひつ)の効果などは誰もが知るところです。欠点は、板として強度が低いこと…

 

空手の板割りを見てもわかります。また古くから柾目の樽や舟が存在しないのは転がしての移動や、岩に当たったりの際、容易に割れてしまうであろうことを想定していたからでしょう。

 

一方板目は、強度があり、あらゆる使用用途が見込める材です。

 

無節の板目材は柾目材同様希少ですし、樹種や産地によって様々な杢(もく)を楽しめるのも魅力です。

 

しかし独特の杢が日常生活に支障をきたす場合もあるので、使用箇所や使用量に配慮が必要です(誰かに見られている的な)

 

板目材は、木裏側と木表側とで調湿量が異なることから反りが生じやすいです。

 

そのための対策や、使用箇所により木裏使いなのか木表使いなのかを見極める目も必要となります。

  

木材を調湿目的として使用する場合、細心の注意が必要です。

 

ホールのような比較的広い空間では問題ないと思われますが、狭い空間に使用するのであれば、柾目材をお勧めします。

 

同じ木材ですから理屈上の調湿能力は変わらないのですが、湿気をとらえる面によって吸湿速度が全く違います。

 

板目では次々現れる堅い晩材(ばんざい)=年輪が抵抗となり湿気を取り込むのに時間を要するのに対し、柾目では、柔らかい早材(そうざい)が瞬時に湿気を取り込みます。風呂上がりの脱衣場での光景をご想像ください。

 

柾目材が多い部屋では、湯気の充満がほぼありません。

 

充満しながらの吸湿より、瞬時に吸湿された方が断然良いですよね

 

結果ではなく過程が大切です。

 

 

 

天然乾燥と人工乾燥

 

 

伐採直後の樹木の水分量は、細胞壁の重量に対して最大200%にも成ります。そのほとんどは「自由水」と言われるもので水そのものです。

 

自由水がある状態での木材は、形状などに変化を及ぼしません。自由水が抜け切ったときの含水率は、樹種に関係なくほぼ30%だそうです。この境界線を「繊維飽和点」と言い、残っている水分を「結合水」と言います。

 

結合水は、細胞壁に取込まれている水分なので、乾燥するにつれて木材の収縮が進行します。収縮は表層から始まりやがて内部に進行します。

 

結合水の低下は、木材の変形に大きく関わり、割れ、ねじれ、反りなど(以下、不具合と表記)はこの段階で発生します。

 

水分が全て抜けることは無く、一定の数値で落ち着きます。この状態の木材を「気乾材」と言い、含水率は、平均1117パーセントだそうです(樹種による差はなく地域環境の差)

 

天然乾燥材とは、大気中にて自然に“気乾”に達した木材であり、大小様々の不具合を伴います。これらを修正しながら製材された木材が天然乾燥材です。

 

要する時間は材積により大きく異なり、薄い板で2週間程度、柱などで半年から1年、断面の大きな梁などでは23年かかるものもあります。大変希少な素材となりますが、樹木が備えた貴重な成分を温存することができる唯一の乾燥方法です。

 

欧州モミ 天然乾燥

 

一方、天然乾燥にかかる“無駄”(時間、不具合)を省くために行われるようになったのが人工乾燥技術で、既に100数年の歴史があります。

 

当初、『成分の温存』などという考えはなく、100℃以上の高温で乾燥していましたが、庫内に溜まるタールの様な成分が木材の有効成分であることを認知し徐々に低温乾燥化が進んで来ました。

 

木材の有効成分が抜け出す温度帯は50度前後(46℃位との説もあり)と言われ、昨今の人工乾燥では、45℃位でとどめていると公表されているところもあります。それでも庫内にはタールの様なものの存在が認められていることも明らかにされています。

 

人工乾燥の最大のメリットは、天然乾燥で半年から1年かかっていた時間を1週間程度に短縮できることです。庫内では、温度、湿度、風をコントロールしながら水分を抜くので、不具合の防止が図れます。

 

欧州モミ テーブル板 天然乾燥

 

対して最大のデメリットは、短時間で乾燥を進めるために細胞を破壊しながら水分を抜くのに伴い、有効成分まで失ってしまうことです。当然ながら細胞壁に備わっている樹木特有の香りにも変化が及びます。 

どちらの方法が良いかは、目的に応じた選択だと考えます。家造りにおいて何を目的にしているのかを明確にすることです。 

例えば、今でこそ当たり前になった気密住宅が建てられる前は「生材」と言われる繊維飽和点に達する前の木材の使用が当たり前でした(現場では「ズブ生」と言っていました)。当然、建築中も乾燥が進み各所に歪みが発生します。「バキッ」と木材が割ける音を聞いたこともあるのではと思われます。

 

天然乾燥では乾燥に伴い強度が高くなるため、割れること自体は問題ではありません。音がするたびに材自体は強くなっています。しかし、乾燥が進む中での歪みは軸組の継ぎ手に大きな問題を起こします。

 

この様な問題を解決するために「KD材」の使用が一般化します。KDとは「KilnDry=窯乾燥=人工乾燥のことです。 

 

ヒノキの柱 人工乾燥材

 

※人工乾燥では、表層に割れが発生しない反面内部割れが顕著

 

  KD材が使用されるようになり、軸組のプレカットシステムが導入されるようになったのは、たった30数年前のことです。

 

木材には個性があります。天然乾燥材を使用するうえでその個性の見極めが大変重要で、熟練の大工さんが一本一本吟味して使用箇所を決めていました。

 

誰が建てるかによって品質に差が生まれるリスクを回避するために、KD材を使用したプレカットシステムが登場した訳です。

 

高気密住宅の建築においての構造材は、人工乾燥材の使用が必須と思われ、弊社では構造体に「スーパーウォール工法」を採用していますので、1996年以降KD材を使用しています。 

余談ですが、人工乾燥材の使用に際しては、樹種の選定に注意が必要です。 

 

構造材として一般的に使われる米松ですが、高温乾燥材で酸性に偏る傾向があるのか使用状況によるかもしれませんが、ボルトがサビることがありました。

 

臭いも強くなり不快です(実体験による)。できる限り低温乾燥したものを選ぶようにしています。

 

 柱に関しては、ホワイトウッド(欧州トウヒ)が一般的ですが、“非常に弱い”と評価されており腐りやすいと敬遠されがちです。強いと評価されているヒノキですが、人工乾燥されたものであれば、極端な話ホワイトウッドと大差ないと考えます。

 

 法隆寺が人工乾燥されたヒノキで建立されていたとしたら多分現存していないでしょう。ヒノキを否定している訳ではなく限られた予算の中でわざわざヒノキを選ぶ理由を考えましょうと言うことです。

家造りにおいて最も大切なのは「室内空気環境」と考えます。

 

住宅の気密化が進み、住まいそのものはもちろん、持ち込まれる生活用品から発生される様々な化学物質や外部からのウイルスなどが充満しやすくなっています。空気清浄機の普及率も高くなっていますが根本的な解決には至りません。

 

 日本の住宅においては、そもそも木材が多用されていてそれぞれの放散物質によって消臭や抗菌など様々な作用の恩恵を受けていました。これらの作用は天然乾燥材のなせる業です。

 

室内空気環境に直接影響を及ぼすのは主に内装材ですので、樹木が育んだ恵みを十分に温存している天然乾燥材を使用することで環境を整えることができると考えます。